火野正平とうちゃこ日記（601）2017年秋の旅 長野県 茅野市 BS日本縦断こころ旅

寒河江幹です。

2017年秋の旅、長野県4日目は茅野市です。
「諏訪湖はワカサギしかいないと思っていた。あら、おはようございます。諏訪湖は今日も晴れ。昨日に引き続き気持ちいい」
薄い水色のプルオーバーを着た正平さん、諏訪湖が目前に広がる岡谷湖畔公園の草の上に座ってお手紙を読みます。

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【茅野　新星劇場】茅野市

私の思い出の場所、それは茅野駅近くにあるたった一つの映画館「新星劇場」です。
線路沿いにあるため列車が通るたび「ガタン、ガタン」と列車の通る音がします。
なんとも味わいのある映画館なのです。
私は茅野市下古田（しもふった）という小さな集落の山の中の一軒家で18歳まで暮らしました。
小さいい頃は山が遊び場でよかったのですが、中学高校ともなると他に楽しみがないものかと思うようになって来ました。
そんな時友達と誘いさそわれ通ったのが「新星劇場」でした。
「ローマの休日」
「サウンドオブミュージック」
「小さな恋のメロディ」
「卒業」
「イージーライダー」
など洋画をよく見ました。
中学の授業の映画鑑賞で「ベンハー」を観ました。
午後の授業が映画の余韻でままならなかったことを覚えています。
酒癖の悪い父でしたが「男はつらいよ」の寅さんを見て大笑いしていました。
一つ一つの映画にその時の自分が重なり、今も大切な色あせない思い出となっています。
平成23年に閉館してしまったとのことですが、その後がわかりません。
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「ワー団体が来た」
手紙を読んでいる終わり頃、体育の授業なのでしょう高校生が団体でランニングしています。
正平さんに気づいて
「こんちわ」
という子もいます。
「茅野正平ですなんて言わないよ」
なんて言いながら地図を広げます。
岡谷を指し、すぐ茅野駅を見つけます。
「正平さんもこれらの映画見ましたか？」（監督）
「大阪ＯＳ劇場で、ベンハーも観たし、サウンドオブミュージックも観たよ。3オクターブのジュリーアンドリュース」
出発。
ランニングする学生たちを追い越すと趣のある旧街道を通ります。
岡谷の街中なのでしょう、昼食にします。
「王様の餃子」
というお店で冷やしタンタンメンを所望します。
大きなギョーザもトッピング。

しばらく走り湖に出て場所を確認します。
湖から離れると黄金の田園地帯。
トランペットのＢＧＭに乗せて、その向うを走る一行をＢカメが捉えます。
一本道、コスモスが咲いています。
「ありゃ、ほおずき」
道ばたに鬼灯が紅く実っています。
「鬼灯鳴らすよね？どうやるんだろ」
「中をくりぬいて出すみたいですよ」（監督）
再び走り出します。
「『ほおずきほおずきまだならせない、ほおずきほおずきもしならせたら』なんて歌昔あったな」
と急に口ずさむ正平さん。
用水路が走る静かな道。
その両脇には庭も見事な旧家が連なります。
「上でオムツ洗って下で茶碗を洗うんですよ」

「だいぶ黄色くなって来たねー」
スカボローフェアのＢＧＭに乗せて銀杏並木を走ります。
休憩。
神社の中をずんずん歩いていきます。
「でっかい欅。生きていれば7〜800年。葛井神社の御神木」
茅野の街中に入ります。
雲一つない空が前方に広がります。
踏切を渡って左折、しようと交差点で止まっていると。
「正平さん」
ふと左を見るとそこが「新星劇場」でした。
とうちゃこ。
「まだ映画やっているよ」
小津安二郎の記念ロードショウをやる予定のようでした。
映画館に入ります。
店主夫妻に説明し中に入れてもらいました。
ロビーにはオードリーヘップバーンのパネル。
立派な劇場です。
「今の座席数は182、だけど昔は300ぐらいあった」（店主）
「その方は、卒業とかベンハーか見たと言っていた」
「60歳ならおれより20歳下だから。その頃は毎週（映画が）かわったよね」
正平さんは劇場の椅子に座って再びお手紙を読みます。

「何か自分の声が響いていて怖い」
誰もいない劇場。
スクリーン。
「ガタン、ガタン」電車の通る音がします。

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